DAIKAI  DENKI

大開電気株式会社

気体に高圧をかけて圧縮すると高温を発し液体に変化します。
この液化した気体が常圧で気体に戻るとき、周りから熱を奪っていきます。これを潜熱といいます。
例えば注射のとき消毒アルコールで腕を拭くと、冷たく感じます。これも液体であるアルコールが気化するときに腕から熱を奪っていくからです。

カーエアコンに限らず、ほとんどの冷却(冷凍)装置はこの潜熱を応用しています。

カーエアコンの冷却システムを図に表すとこうなります。

  1. コンプレッサーによって圧縮された冷媒(エアコンガス)は高温高圧の半液体の状態でコンデンサーに入ります。
  2. 冷媒はコンデンサーでコンデンサーファンの風によって冷却され、さらに液化が進みレシーバーへ送られます。
  3. レシーバーでは液化できなかった僅かな冷媒を液冷媒と分離して、乾燥剤やストレーナによって水分や不純物が取り除かれます。
  4. 液冷媒はエキスパンションバルブ(膨張弁)の微小なノズル穴からエバポレーター内へ噴射され一気に気化します。
  5. 気化した冷媒はエバポレータ周りの熱を奪っていき、それによってエバポレータが冷やされます。そこにブロワファンの風を通過させて冷風を起こします。
  6. 車内の空気中の水分は冷たくなっているエバポレーター表面でで凝縮され水滴となり、車外へ放出されます。これにより除湿が行われます。
  7. エバポレーターを出た冷媒はまたコンプレッサーに戻り再び圧縮されます。

このように冷媒を循環させてひとつのサイクルを構成しています。
さらにエバポレーターの温度によって、エキスパンションバルブの噴射量を調整したり、電気的にコンプレッサーの作動をON/OFFしたり等、適正な冷房能力を維持する為さまざまな制御がなされています。

夏場にエアコンを入れたが、全然冷えてこない。または冷風は出ているがちょっと冷えが甘いような気がする・・。など、
一般にカーエアコンの不調症状はこんなところだと思いますが、実は同じ症状でもエアコンの故障にはいろんなタイプがあります。

それではカーエアコンの故障にはどのような種類があるのでしょう。
大まかに二つに分けてみました。

<dl><dt> ACサイクルの機械的故障 </dt><dd>エアコンサイクルを構成している部品が過度な使用、経年劣化や腐食によって起こる故障。ガス漏れやコンプレッサーのロック、サイクルの詰まりなどがこれにあたります。
最も多いのがガス漏れです。カーエアコンはスペースの問題でサイクルの配管が複雑で、接合部分も多いため、1箇所から大量に漏れているケースもあれば、数カ所に分かれて漏れているのもあります。 </dd><dt>
制御系の電気的故障 </dt><dd>サイクルは正常だが、コンプレッサーや空調などを電子制御している部分に異常があるため、冷風が出ない症状。 </dd><dd>オートエアコンの出現によって電子化が進み、最近特に増えてきた故障です。比較的簡単に直るケースもあれば、故障個所を見つけるだけで丸一日費やすこともあります。 </dd></dl>

電気的故障もケースによっては電子部品の機械故障と言えるものもあって、この括りはかなり乱暴だと思いますが、わかりやすくする為に敢えてこうしました。また上記2つが複合している場合もあります。

昨今のカーエアコン特に乗用車に主流のオートエアコンは、各所のセンサーにより風量、噴出し温度、噴出し口がすべて電気コントロールされている為、家庭用エアコンより制御が複雑です。そのため上にも書きましたが、故障のタイプの中でも診断が厄介なものです。

サイクル故障、特にガス漏れに関しては、クルマが動いていない時でも漏れ続けていますので、いくらガスチャージをおこなって一時的に復活しても、漏れ個所をしっかり直しておかなければ、完全に直ったとは言えません。漏れ度合いにもよりますが、ひどい時には2週間ももたないこともあります。ガスチャージしてもまたすぐに冷えないようなら、漏れ点検を行ってください。
またサイクル詰まりの場合でも冷えないからといって、むやみにガスチャージをすると、ガスの過剰充填になり、コンプレッサーなどを壊してしまうので、注意が必要です。

このようにカーエアコンは故障する部分が多岐に渡っているため、故障診断が大変複雑になっています。
また高圧ガスが封入されている個所もありますので、確実に修理する為にはプロによる適切な診断と修理技術が不可欠なのです。